役を生きるとは?~役へのアプローチ~
- 2021.02.03
- ミュージカル演技 リアリスティック演技
- メソッド演技, リー・ストラスバーグ, 演技術

「演技するのではなく、ただ役としてそこに存在すること。」
これを出来ることが、リアリスティック演技理論においては大切なこととされています。
いくつも存在するリアリスティック演技術の流派が唱えるのは、「役を生きることの重要性」です。
では、そもそも「役を生きる」とはどういうことか?
それは、俳優の人間性そのものを使うことです。役と自分をリンクさせることです。
俳優は、役を生きる為に様々なアプローチで意識的に役と自分をリンクさせていく。その為の方法が理論として確立されているのが欧米の演技術の特徴ですが、流派により考え方やアプローチは様々。私が学んだ、リー・ストラスバーグの教えを基礎としたメソッド演技術では、「役を生きる為には自分自身を意図的に使うこと」を重要視していました。(*もちろん、これに異を唱える流派もあります。)
俳優さんの中には、「俳優はみな自分を無意識に役とリンクさせて(役に自分を投影させて)演じているから、特別な理論に基づいたテクニックは必要ない。」という考え方を持っている方もいると思います。しかし、私はリアリスティック演技理論を学ぶ過程で次のようなことを教わりました。
「自分と役をリンクさせる作業は、意識的なアプローチであるべきだ。」
もちろん、最終的に演技しているときは「無意識に自分が役に投影される」ことが望ましいです。演技しているときに頭を使って意識していては役を生きることにはなりません。意識的なアプローチは役作りの段階(稽古中)で用いるのです。
では、意識的に自分と役をリンクさせるにはどうしたらいいか?
ロジック + パーソナライズ = リアリティー です。
ロジック(脚本に書かれた論理)を基に、パーソナライズ(役に自分を投影させる作業)をすることで、結果的に「役を生きる」というゴールにたどり着くという考え方です。
これは、あくまで個人的な見解ですが、「日本の俳優の演技にはロジックが希薄である」と思います。役を生きようと自分を使ってはいる、しかし、ロジックが欠落していることで、作家の意図とは違った人物像を演じてしまっている…。もちろん、これは演出家の責任もあるのですが、それを差し引いても、「役を自分に引き寄せて演じやすいように演じている俳優が多い」と思います。
私は、「俳優は役を引き寄せるのではなく、役に歩み寄るべき」だと思います。作家の意図通りの人物像に自身が持つ魅力を上乗せして演じる、これが俳優の仕事だと思います。
脚本に書かれた役のロジックを理解し、それを使って役と自分をリンクさせていく作業。実際にどういった手順で進めるのか?
- STEP1. 脚本の分析
- STEP2. パーソナライズ作業(個人化)
- STEP3. 分析結果を使ったリンク作業
- STEP4. 演出家の意図との調合
また別の記事で、STEP2~4について詳しく解説してみようと思っています。STEP1については、既に分析法を解説してありますので、こちらを読んでみてください。
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