ソロナンバーの立ち上げ②-3 アクションの設定

ソロナンバーの立ち上げ②-3 アクションの設定

ビート分けが済んだら、次は「ビートごとに戦法をあてがう」作業に進みます。

アクション(意図)≠ 「こんな風に歌う」

戦法は、「こんな風に歌う…という表現の仕方」とは似て非なるものです。

みなさん、歌うとき/台詞を言うとき、「ここは優しく」とか「もうちょっと激しく」「もっと切なく」など、「こんな風に…」という表現の仕方を優先して演技する人はいませんか?しかし、リアリスティック演技理論においては、「こんな感じに歌う/話す」を優先させて演技するのは御法度です。なぜなら、それは結果優先の演技/イメージだけのなんとなくの演技に陥るからです。

もちろん、最終的に演技にヤスリをかけるときには、理屈抜きで、「もうちょっと滑らかに/強く」などというイメージは必要です。演出家や歌唱指導者からもそのようなアドバイスを貰いパフォーマンスを形作ることもあると思います。ただ、重要なのは、最初から結果に走らないためには「こんな感じ」ではなく「なぜ、どういった意志で」というアクションをもって行動する…ということです。

台詞を言うとき/歌うとき大切なのは、“どう見えるか”ではなく、“どういう意志/意図で行動するか”です。

さらに、もうひとつのポイント、

アクションとして使うことばを探す時に心情を吐露するソロナンバーの場合は自動詞で構わない。(ストレートプレイのシーンでは他動詞)   *アクションの具体的な導き出し方は過去記事を参照ください。

 

では、例を見ていきましょう。

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戦法の言葉を考える為の思考の流れ。

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もしかしたら、深呼吸するという戦法を持って♪人みな眠る夜ひとりで歩こう あの人思えば幸せになれるよ~♪と歌ったら、結果的にエポニーヌの健気さが表現されるかもしれませんよね。

戦法が「役を生きるため」に役立つ理由。

繰り返しますが、ミュージカルナンバーは、「なぜその言葉を発するのか?という、人物の意図」を理解したうえで歌うことが大切です。当たり前のことのようですが、具体的に細かく意図をもって各フレーズを歌うのには緻密な準備が必要です。それが、脚本分析です。

脚本分析をして導き出した戦法でフレーズを歌うことで役の心理を作家の意図に近い形で体現できます。そして、その戦法(意図)を念頭に歌うと、そこに俳優自身が投影されやすくなります。

エポニーヌの「辛さを外に吐き出したい」気持ちと、俳優が「(違うシチュエーションであっても)辛さを吐き出したいとき」の気持ちが自然とリンクするわけです。これがパーソナライズ作業のうちの一つです。

Step1の脚本分析により、エポニーヌがなぜ一人夜の街を彷徨うのか?何のためにそういう行動をするのか?を理解した後に、Step2で、歌詞をビート分けし戦法を設定する。この作業を基礎として、Step.3では様々な方法で「パーソナライズ作業」を進めるわけです。

さて、次回からはパーソナライズをする作業の解説に移りたいと思います。