ソロナンバーの立ち上げ Step5. テクニックとの融合
- 2021.02.17
- ミュージカル演技
- ミュージカル, リアリスティック演技, 歌唱テクニック

役のロジックを分析し、役と俳優自身をリンクさせるパーソナライズ作業が終わったら、あとはひたすら繰り返す仕上げの段階に入ります。
この段階では、様々なテクニック(歌唱面や身体行動面)と内面のリアリテイーとの融合を図ることを試みます。
反復練習時のポイント
1.感情とピッチ/リズムのバランス
トランス状態(自意識の薄い状態)での歌唱時に起こること。それは、ピッチが悪くなったりリズムを外してしまいがちになること。なぜなら理性が薄れている状態だから。
怒りや悲しみの感情が溢れ出している時には、理性が薄れ、その結果、歌唱に必要なテクニックに意識がいかなくなる場合があります。例えば、こみ上げた感情が原因で喉が絞まってしまうことで、冷静な時よりも歌唱のクオリティーが下がってしまいます。そのようなことに陥らないように、出来るだけトランス状態のままでも正確な歌唱が出来るようにする練習が大切です。
2.感情と身体表現のバランス
1と同じような理由で、トランス状態の時は身体の使い方に意識が向きづらくなります。例えば、体幹がブレたり、必要以上に手足を動かしてしまったり。そうなると、歌唱にも影響することはもちろんのこと、はたから見た時に違和感のある見づらい演技になってしまいます。
これは、ミュージカル演技に求めらる独特なテクニックのうちの一つだと思いますが、ストレートプレイや映像ではある程度「感情のままにナチュラルに」動いたほうがリアルだし観客は違和感がないと思います。しかし、ミュージカルの場合は、ある種の様式化されたメリハリのある演技動作を求められます。
3.感情と客観性のバランス
自分の演技がどう見えているか?という客観性を持つことは演技における大事な要素です。ですが、トランス状態になることは、敢えて俳優自身の中での客観性を無くす作業でもあるので、無意識領域と意識領域のバランスが難しくなります。
冷静な時は客観性を持てても、感情的な時はそれを忘れてしまう。日常生活においてもそうですよね?
この反復練習では、「自分を俯瞰して見る客観性を保つこと」を意識しながら、トランス状態で歌唱を繰り返し訓練します。
4.演出家の指示との融合
「今自分の中で起きている素直な感情の流れと行動」と「演出家に求められていること」を融合させることを試みます。
俳優の中には、「演出家の指示と自分の心身の状態が矛盾して、言われた通りに演技するのに気持ち悪さを感じる。」という経験をしたことがある人は多いと思います。
俳優が、リアリティーを求めトランス状態で自分の心身を正直に使い演技しようと思うと、時にはそれが独りよがりで自己満足の演技に陥る場合があります。
そうならないように、主観 X 客観を試みる練習を繰り返すプロセスは大切です。
冷静な状態ではなく、敢えてトランス状態になった状態で主観 x 客観を試みることが何よりも大きなポイントです。
以上が、Step5で行う作業です。
次の記事で、「ソロナンバーの立ち上げ」シリーズをまとめていきたいと思います。
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