【ロジカル演出術】④ 稽古前準備 1.リサーチ [作品について]

【ロジカル演出術】④ 稽古前準備 1.リサーチ [作品について]

ロジカルに演出する為に稽古前にすべき準備の一つ目は「リサーチ」です。

どのようなリサーチが必要か?項目ごとに整理していきます。

項目

  1. 作品について
  2. 作家について
  3. 上演記録について

1.作品について

作品(物語)についてのリサーチは以下の項目に的を絞って行います。

 

  • 【物語の設定】   時・場所
  • 【登場人物】    年齢・職業などを基にした生活環境全般
  • 【テーマ】     社会的事象について

 

【物語の設定についてのリサーチ】

物語がいつの年代のどこに設定されているか、を基にしてリサーチします。

例えば、<1946年のアメリカ合衆国東部地方都市>が物語設定の場合。この設定から想定される背景を洗い出します。 

  • 第二次世界大戦後のアメリカ合衆国の社会状況は?
  • アメリカの東部に限っての社会状況は?
  • 地方都市に限った社会状況は?

 

 

これらに限らず、様々な【限定条件】を割り出して、そのことに関して徹底的にリサーチします。ここで言う【限定条件】とは、①作家がト書きや台詞中で直接述べている条件 & ②論理的に浮かび上がる条件(台本中に言葉では書かれていない)です。

 

例えば①…

脚本の冒頭のト書きに「1946年 ニューヨーク州シラキュース」と具体的に文章で書かれていれば分かりやすい限定条件ですよね。

一方で②のほうは…

仮に、「第二次世界大戦後の地方都市」だけで、具体的に何年でどこの都市なのか?は脚本に書かれていないとします。その場合、歴史上の事実や登場人物の言動などを検証し答えを導き出します。以下のような情報を基に導き出します。

 

  • 主人公は第二次世界大戦後に帰国した帰還兵である。
  • 台詞中で「終戦後、国に帰ってきてからまだ1年も経ってない」と言っている。
  • 物語設定の季節は春である。
  • オンタリオ湖まで5時間かけてドライブするシーンがある。
  • 比較的大きな都市である。

 

 

まず、歴史上の事実で第二次世界大戦は1945年8月終戦。それから1年経っていない春となると「1946年の春」ということになります。そして、オンタリオ湖から車で5時間ほどの距離の中規模都市を地図で調べてみると、「シラキュースかも?」と考えられます。

 

【どんな限定条件についてリサーチすればいいのか?】は、脚本分析法解説の記事で挙げた「5W」を考えてみると分かりやすいと思います。5Wについては、こちらの記事を参考にしてください。

 

 

 

【登場人物についてのリサーチ】

作品中の全ての登場人物に関して、以下のことに注目してリサーチをします。リサーチをする事柄は物語設定の時と同じように「論理的思考で導き出します」。

  • 年齢
  • 職業
  • 家族
  • 人間関係
  • 私生活(趣味や好き嫌いなど)

これらについても「5Wについての記事」で解説しました。

登場人物についてのリサーチは俳優にとても大切です。登場人物について、リサーチを基に人物像を具体化しておくと、演技をするときの「視点(Point of View)」が定まります。

演じるうえで「視点」は重要です。一つでも多くの視点をもってそこに存在することが等身大の人物をリアルに演じることに繋がります。

この「視点」が薄いと、「イメージ先行の結果優先演技」に陥りがちになります。シーンの状況だけからインスピレーションを得たり、演出家に指示された通りのことを体現しようとだけすると、形骸的な演技になってしまいがちです。

そういった意味でも、演出家がリサーチを基にした登場人物の視点を具体的に割り出しておくことは、俳優をロジカルに導く為の重要な道具の一つというわけですね。

【テーマについてのリサーチ】

脚本分析における3大要素の一つ「テーマ」(こちらの記事)から限定される項目についてリサーチします。

例えば、とある架空の作品のテーマは「戦時中の正義とは?、政府 vs 市民、金と道徳観どちらが大事? 世代間ギャップ」だとします。

これらのキーワードを基準に考えられることをリサーチします。例えば、

  • 戦時の状況(設定と絡めて限定する)
  • 政府の方針は?
  • 市民の経済状況は?
  • 世代間でどのような価値観の違いが存在した?  など。

以上が、3つのリサーチ項目(1.作品 2.作家 3.上演記録)のうちの一つ目、「作品についてのリサーチ」についてです。

次の記事では、「作家についてのリサーチ」について整理していきます。