【ロジカル演出術】⑧  稽古前準備 3. [コンセプト・ブック作成]

【ロジカル演出術】⑧  稽古前準備 3. [コンセプト・ブック作成]

ロジカル演出での準備事項の3つ目「コンセプト・ブック」の作成です。

「コンセプト・ブック」は、美術/照明/音響/衣装/振付/音楽…などのプランナーと【作品のコンセプトを共有する為】に使います。

ブックに織り込む項目は以下のようなことです。

  • 脚本分析結果(作品のテーマ・役の大目的)
  • 演出スタイル
  • ビジュアル・サウンド資料
  • 各場面の方向性(求める演出効果)

脚本分析結果

主に、作品のテーマ、全登場人物の大目的の2点を文書にして簡潔にまとめます。

これらの分析結果は俳優と共有するだけでなく、クリエイティブ・スタッフと共有することで、作品のロジックに沿ったビジュアルデザインを想像する基礎となります。

単に、作家が脚本に書き記したト書きにある情報だけを基にしても舞台美術や衣装に「テーマ」は反映されません。ロジカル演出では、「作品を的確に観客に届ける役割を果たせるデザイン創造」をゴールとします。

演出スタイル

自分がその作品をどのようなプレゼンテーションのスタイルで観客に届けたいのか?を明快に示します。

リアリスティック(写実的)なスタイルなのか? 抽象表現に富んだ幻想的なスタイルなのか? 奇抜で斬新なアイデアに富んだ前衛的なスタイルなのか?をクリエイティブ・スタッフに分かってもらえるようにします。

ビジュアル・サウンド資料

「どのような世界観を求めているのか?」というイメージを共有できるようなビジュアル資料(写真など)を用意します。

建物の写真、使いたい色、使いたい音色、などの具体的な資料を揃えます。

各場面の方向性

具体的なシーンやモーメントについて、「その場面の演出家の解釈」「それをどう観客に届けたいか」に着目して文書にして整理します。

例えば、激しい舌戦が繰り広げられるクライマックスシーンは、作家の意図としては“混沌が表現されている”という分析結果があるとしたら、そう記します。

ミュージカルの場合、例えば、「1960年代の底抜けに明るい能天気なNYの華やかな狂乱」を表現していると分析したダンスナンバーがあるとしたら、そう記します。

あくまで、演出家がロジカル思考で導き出した分析結果を共有することが大切です。決して、ロジックなしの自分のイメージだけを伝えてはいけません。


なぜ、口頭での打ち合わせでなく、わざわざ文字に起こして整理して伝えることが重要なのか?

それは、「具体的なデザインイメージをデザイナーに押し付けることなく、論理に裏付けされた一貫性のある演出プランを理解してもらう助けになる。」からです。

デザイナーにとっては、ブックとしてまとめられたものに一気に目を通すことで、作品&演出家の方向性を理解しやすくなります。言葉で伝えるのは意外と難しいものです。演出家が口頭で頑張って自分の意見を伝えようとすると、時には、自分の意見を押し付けてしまうことにもなりかねません。

私は演出クラスで、「デザイナーとのコラボレーションにおいては、相手のイマジネーションを喚起することが演出家の仕事であって、決して自分のプランを押し付けたり、お願いして思い通りにデザインしてもらうことではない。」と教わりました。個人的には、俳優を導くときと全く同じだと思います。

コンセプト・ブックを論理的思考に基づき作成することはロジカル演出術ではとても大切な準備作業なのです。

さて、次回は、事前準備の4つ目「ロードマップ」についてです。